抗がん漢方生薬:金蕎麦(キンキョウバク)
金蕎麦(きんきょうばく)はタデ科の植物Fagopyrumdibotrys(D.Don)Haraの根茎を乾燥させたものであり、中医では清熱解毒、排膿去おの効能を持つとされている。
近年の研究により、金蕎麦は顕著な癌予防作用及び抗腫瘍活性をもち、同時に抗酸化作用、免疫増強作用、抗菌、消炎作用等が確認されている。今後、さらにその臨床応用が期待される生薬である。
1.化学成分
金蕎麦には、最も重要な活性成分であるポリフェノール類をはじめとして、ステロイド類やトリテルペン類等の成分が含まれる。
2.薬理作用
2.1:抗菌作用
- 金蕎麦抽出物は黄色ブドウ球菌に対して顕著な抑制作用をもち、細胞外において耐熱性のヌクレアーゼ活性を阻害する。
*黄色ブドウ球菌は食品および培地中で増殖して耐熱性ヌクレアーゼを産生するため、耐熱性ヌクレアーゼの存在は黄色ブドウ球菌の増殖を示す根拠となる。
- 金蕎麦のエタノール抽出物をマウス及び溶血性連鎖球菌等10種類の病原菌に対する抗菌作用について研究したところ、マウス体内においては高い抗炎症作用が認められた。
- 金蕎麦のエタノール抽出物はB群溶血性連鎖球菌と肺炎球菌に対して顕著な体外抑制作用を示した。体内抑菌実験においても肺炎球菌株によってもたらされるマウスの感染に対して保護作用があることが認められた。この抗菌作用は金蕎麦中に含まれるフェノール酸類及びフラボン類化合物によるものである。金蕎麦の水、エタノール、石油エーテル抽出物は黄色ブドウ球菌、大腸菌、枯草菌等に対して顕著な抑制作用を示す。
2.2:鎮咳、去痰、抗炎症作用
- 関連の実験によって、金蕎麦抽出物には鎮咳、去痰、抗炎症作用があることが確認された。
- 金蕎麦抽出物はマウスの外耳腫脹、白血球遊走(炎症の原因となる)に対して顕著な抑制作用を示した。また、金蕎麦抽出物はラットの足裏における炎症性組織中のプロスタグランジンE2の含量を顕著に下降させることから、抗炎症作用を有する活性成分が含まれることが判明した。
2.3:抗がん作用
生体外実験(インビトロ)での抗腫瘍作用
- 金蕎麦抽出液には顕著な抗腫瘍作用があり、培養細胞実験において肺腺癌細胞GLC、子宮頚癌細胞HeLa、胃腺癌細胞SGC-7901、鼻咽頭癌細胞KB等のヒト癌細胞に対して顕著な殺傷作用を示した。その作用は薬物の濃度に依存し、血中濃度が高くなれば殺傷作用、抑制作用も増強する。
- 金蕎麦は多種のヒト癌細胞の幹細胞に対して顕著な殺傷、抑制作用を有し、DNAの合成作用を抑制する。金蕎麦は癌細胞内において核酸代謝を抑制し、その抑制作用は同質量濃度の5FUとほぼ同程度である。
- 金蕎麦抽出物は15〜120μg・ml-1の質量濃度範囲内において、肝(HepG2)、白血球(K562)、肺(H460)、結腸(HCT116)、骨(U20S)由来の癌細胞に対して顕著な成長抑制作用を有し、肝癌細胞に対しては最も顕著な反応を示した。またHela(子宮頚癌細胞)及びOVCAR-3(卵巣がん細胞)の成長に対して軽微な抑制作用をもつ。抽出物の質量濃度が60μg・ml-1を超えたときのみ前立腺癌細胞(DU145)と脳癌細胞(T98G)の成長産生に対して抑制作用を示す。
- 金蕎麦抽出物は体外環境においてヒト胃がん細胞株SGC-7901及びヒト肺癌細胞株A549の増殖を顕著に抑制し、死滅へ導く作用があり、さらには肝癌細胞HepG2の増殖を顕著に抑制し、細胞攻撃能力を顕著に降下させる。FRは臍静脈内皮細胞ECV-304細胞の増殖を抑制し、死滅に誘導する作用があり、鶏卵漿尿膜法(CAM法)を利用した血管新生を顕著に抑制する。
- 金蕎麦から抽出されたタンニン類化合物は肺癌細胞株PG、PAa、A549、肝癌細胞株BEL-7402、胃がん細胞株MGC-803及びメラノーマ細胞株B16-BL6等に対していずれも異なる程度の抑制作用を有する。また、化学療法において使用されるシスプラチンによる腫瘍細胞の体外における増殖抑制作用を増強させ、肺がん細胞株PGとPAaの細胞周期をS期に停滞させる作用がある。
生体外実験(インビボ)での抗腫瘍作用
- 金蕎麦抽出物が100mg・L-1量の下、B16-BL6細胞の攻撃を顕著に抑制し、200 mg・L-1量の下B16-BL6メラノーマ細胞のC57BL/6マウス体内における肺への自発転移を抑制する。
- 金蕎麦抽出物はS180肉腫、肝癌H22の固形腫瘍の成長を抑制し、その抑制率は41.4%〜68.3%に達する。
- 金蕎麦抽出物は400mg・kg-1量のとき、C57BL/6マウスのlewis肺癌の成長を顕著に抑制する。
- 金蕎麦抽出物は60〜240mg・L-1量の下、白血球細胞株HL60細胞のアポトーシスを誘導し、その作用機序はテロメラーゼ活性の低下と関係していると推測される。
- 金蕎麦抽出物と抗ガン剤シクロホスファミド(エンドキサン)の併用により、移植腫瘍サルコーマ180(S-180)、肝癌細胞H22の成長抑制に対して相乗作用を示し、エンドキサンの骨髄抑制に対し拮抗することが分かった。
2.4:抗酸化作用
- 金蕎麦中から分離されたdibosideAとlapathosideAには弱い抗酸化作用があることが判明した。
- 86種類の薬食両用植物の総抗酸化能力、総フェノール含量、フラボン含量及びDPPHラジカル消去活性について比較研究したところ、金蕎麦は高い抗酸化能力を示した。(FRAP値> 2. 35 mmol・g-1 , DPPH 消去率>85%)また、比較的高いフェノール含量(> 85 mg・g-1)、フラボン含量(> 30mg・g-1)を示し、これらの結果より金蕎麦の優れた抗酸化能力を示す指標を得ることができた。
*フェノール、フラボンは抗酸化作用を有する。
2.5:免疫増強作用
- 金蕎麦をマウスに与えることでマクロファージの働きを顕著に上昇させ、抗がん剤5FU及びシクロホスファミドによって引き起こされる免疫抑制の副作用を軽減することができた。
- マウス背部に金蕎麦抽出物を皮下注射もしくは胃内投与したところ、マウス腹腔内においていずれも異なる程度のマクロファージ貪食作用の増強が観察され、金蕎麦がマウスの免疫機能に対して増強作用を有することが判明した。
- 金蕎麦の免疫調節活性に対する細胞分子のレベルを血清薬理学的に研究したところ、金蕎麦のエタノール抽出物は濃度、時間に関連してリンパ球の増殖活性を刺激することが確認された。
出典
西北薬学雑誌2011年4月 第26巻 第2期
「金蕎麦の化学成分と薬理作用の研究」
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